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気がつけば、ここはメキシコだった

メキシコ在住ライター、小さな食堂『EN ASIAN FOOD』のおばちゃん、All About メキシコガイド 長屋美保のブログ

ロス・コホリーテスのニューアルバム『サパテアンド』リリース記念コンサート

2014年12月19日に、今年の米国グラミー賞のメキシコ伝統音楽部門にもノミネートされた、ソンハローチョを代表する若手グループ、ロス・コホリーテス(Los Cojolites)。彼らのニューアルバム『サパテアンド(Zapateando)』発売記念コンサートが、メキシコシティ市立美術館で開催されたので行ってきた。

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↑ロス・コホリーテスの新作『サパテアンド』のジャケット
 

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メキシコシティでのコンサート会場風景。ヒッピーな若者も多かったが、高齢の来場者も多かった。
 
「ソンハローチョ」とは、メキシコ東部メキシコ湾沿いのベラクルス州発祥の伝承音楽で、スペインの植民地支配下だったころ、農園に現地の先住民たちや、カリブに渡ったアフリカ系移民たちが連れて来られ、労働に従事する合間に音楽を奏でるようになり生まれた。スペイン伝来の楽器、アフロカリブや、先住民伝来のリズム、旋律が融合し生まれた混血音楽である。詩のかけあいのような歌や、木の箱のようなタリマという台の上で、足を踏み鳴らしてリズムをとるサパテアードという踊り、小型弦楽器ハラーナやレキント、アルパ(ハープ)など複数の弦楽器によって演奏される。ユネスコ無形文化遺産に登録されるマリアッチよりも長い、300年以上の歴史を持つ音楽だ。
 
ロス・コホリーテスは、2014年11月ベラクルスで開催された、Juegos Deportivos CentroAmericanos y caribes(中央アメリカカリブ海競技大会)開会式の演奏で、トリを飾るほど有名で、現在のソンハローチョを代表するグループといえる。
 
 
日本でもロス・コホリーテスの『ソン・ハローチョ~終わりのない歌』と『センブランド・フローレス』の2枚のアルバムが、ミュージックキャンプより発売されている(新作『サパテアンド』は2015年1月11日に発売)。
  

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↑CD即売の様子 

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 ロス・コホリーテスのメンバーたち

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  ロス・コホリーテスのメンバーたち
 

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今回のライヴではエレキベース、ドラム・パーカッションを新たに加えた編成で、以前より豪華な印象だ。

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でも、なんといってもレキントや複数のハラーナといった伝統的なソンハローチョの弦楽器アンサンブルと、歌の掛け合いに心を奪われる。超絶の速弾きで、艶やかな音を聞かせる彼らの演奏はやはり凄い。

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サパテアード担当のノラは以前見たときよりも、ずっと美しく輝いていて目を見張る。
 

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新作『サパテアンド』の収録曲を中心に過去のアルバムの曲も織り交ぜて演奏するが、
観客たちからは、1曲演奏を終えるごとにリクエストが叫ばれる(メキシコらしい風習?)。とくに、ファーストアルバム『El conejo』に収録されている「ルナ・ネグラ」と、セカンドのセンブランド・フローレスの同名曲「センブランド・フローレス」のリクエストが多かった。
 
今回のライヴで感動的だったのが、新作『サパテアンド』に収録された「Las Poblanas」で、行方不明のアヨツィナパの学生たちへの連帯を示して、一部の歌詞をアヨツィナパに替えていたのだった(※メキシコ・ゲレロ州アヨツィナパ教員養成学校の43人学生を警察が虐殺した疑いが濃厚な事件が起こり、今メキシコじゅうが怒りに震え、全国各地で連日のように政府への抗議活動が続いている)。
 
↑ロス・コホリーテス『Zapateando』に収録された「Las Poblanas」のPV。
闘うひとたちに捧げる曲だ。
 
ノエが「僕たちは汚職にまみれたメキシコ、姿を消す人々が後を絶たないメキシコに心を痛めている。でもメキシコは変わる。それを信じる」というと会場からは、大きな歓声があがった。
観客が1から43まで数えはじめ、最後に「Justicia!(正義を)」と叫ぶ。
観客が一斉に数字を唱え、正義を訴える行動は、メキシコシティで行われたマイケル・ナイマンの公演や、ペドロ・アスナールの公演でも体験した。
 
そして、リクエストが多かった大人気の曲「Luna Negra(ルナ・ネグラ)』の演奏が始まると観客たちは大合唱を始めた。レゲエ・バージョンの演奏だ。レオナ(ソンハローチョの伝統弦楽器で低音部を演奏する)担当のホエルが、サパテアードで粋にリズムをとってるのがまたカッコいい。

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↑コンサートでのLUNA NEGRAの演奏
 
Yo fui a la revolución yo fui  
僕は革命をしにいったんだ        革命をしに
Yo fui a la revolución a luchar por el derecho
僕は革命をしにいったんだ 権利を勝ち取るために
a sentir sobre mi pecho una gran satisfacción  
僕の胸が大きく満たされるために
mas hoy vivo en un rincón, cantándole a mi amargura 
今日を片隅に生き 僕の悲嘆を歌っている
pero con la fé segura de que es el hombre campesino 
でも恩恵とともにある 農民の僕には確かな
nuestra esperanza futura.
僕らの未来への希望がある 
Luna negra, negra luna, ¡negra! Color de tu madre 
黒い月 黒い月 黒い!君の母の色
Luna negra, negra luna, ¡negra! Color de tu madre  
黒い月 黒い月 黒い!君の母の色
Color de tu madre, color de tu madre  
君の母の色 君の母の色
「Luna Negra」 Los cojolites
 
 
アンコールでは新作『サパテアンド』の最後の曲である「El toro」を演奏し、バンドメンバー全員が楽器の演奏を離れて、息の合ったサパテアードを披露した。そして熱狂の喝采のなかコンサートは終わった。

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ファンダンゴソン・ハローチョ文化において最も重要な歌と踊りと演奏を皆でセッションする)になりそうなほどの勢いだったけれども、人が多かったので皆で踊れるスペースがなかったのが残念だ(ちなみに「ファンダンゴ」がどんな雰囲気なのかについては、旅のwebマガジン、TABIZINEの『世界遺産の町が歌と踊りと音楽に包まれる、メキシコの「カンデラリアの祭り」』という記事に書いた)。
 
 メキシコシティの本公演の5日前、ロス・コホリーテスは、ゲレロ州チルパンシンゴで開催予定だったアヨツィナパの支援文化イヴェント『Una Luz en la obscuridad por Ayotzinapa(アヨツィナパ、闇の中のひとつの光)』に出演するため、Panteón rococo(パンテオンロココ)、Los Aguas Aguas(ロス・アグアス・アグアス)、Olmeca(オルメカ)ら多くのミュージシャンたちや、主催のアヨツィナパ教員養成学校の学生や教員、行方不明の学生43人(そのうちひとりの遺体が12月9日に発見された)の親族らとともに現地にいた。そのときの体験を語ってもらい、個人ブログ『El Fandango en la frontera:メキシコ・アヨツィナパ支援イヴェントを警察が妨害』に掲載したので、ぜひ併せて読んでいただきたい。
 
 
 
http://mihonagaya.com/