パソコンをぶっ壊して救われたこと
久々のブログ更新。というのも、先月ノートパソコンがぶっ壊れたのだ（というか、水をぶっかけてしまい、壊してしまった）。修理に出したら、キーボード部分は壊れてしまったけど、本体はなんとか無事だった。
私はスマホでネットをチェックするのが、あまり好きではないので、パソコンを修理に出している１ヶ月間は、ほとんどネットをチェックすることなく、読書の時間もできたし、家事も進んだ。
原稿の仕事もあったのだが、ルームメイトのパソコンを借りて仕上げたので、「人の大事なパソコンを借りているのだから、速く終わらせなければ」というプレッシャーで、通常の倍の速度で仕事を終わらせることができた（いつも、どんだけ集中力がないかを思い知った）。家族や友人との会話も増えた。そして、パソコンの前にずっといるのって、いかに時間を無駄にしているか、というのを思い知ったのであった。
と、いきなり悟ったようなことを書いているが、そこまで到達するまでに、私は１週間くらい苦しんだ。
まず、パソコンをアップルの代理店に持って行ったら、修理に法外な金額を要求され、新品を買ったほうがいいといわれた（※しかし、結局、パソコンは知人に、かなりお得な値段で修理してもらえた。彼は以前も私の友人のヴァイオの壊れた液晶交換をやってのけたことがある。メキシコでは、パソコンや電化製品など、ありとあらゆる部品を手に入れられるルートがあり、修理しながら、ものを大事に使える）。
そこで、パソコンが完璧に死んだと思っていた私は、ああ、これでライター仕事もできないし、とにかく私たちの経営する食堂での仕事を日々こなせばならない、と焦っていた。うちの食堂もけっして儲かってるわけではないから、いきなりパソコンのような高い買い物はできない。とはいえ、金の無心を実家にするのも気がひける。ちょうど、その頃、ローマ法王がメキシコに来た時期で、道が閉鎖された関係で、売り上げがガタ落ちしていたし、なんでこんな時に、パソコンに水をぶっかけてしまったんだと、己を呪ったのであった。
そんなドヨーンと落ち込んでいたある日、「お客も来ないし、早仕舞いしよう」と思っていたら、アジア系とみられる米国人らしき女性が、店を訪れた。カタコトだが、スペイン語を話している。彼女は、肉が好きではないとのことで、カモテ（メキシコのサツマイモっぽい芋）とレンズ豆で作ったハンバーグを注文した。そのハンバーグをたいそう気に入ってくれた彼女が、「ハワイの日系移民が生んだロコモコの味付けに似ている。私は、フィリピン系の米国人なんだけど、ハワイに住んでいたことがあるから日系人と交流がある」と語った。そうか、フィリピン系だからスペイン語ができるのだなと感心すると同時に、ちょうど店で流していたCDが、アフリカとフィリピンにルーツを持つアーティスト、ジョー・バターンの「アフロ・フィリピーノ」だったため、なんだか盛り上がってしまった。そこで、話しが弾み、心を許してくれた彼女は、今回、メキシコシティへ旅行で訪れたこと、カリフォルニア州のサンフランシスコに近いワインぶどう農園で、観光客向けのガイドをやったり、品質管理をやっていることを語ってくれた。私が、「それってもしかしたら、チカーノ（メキシコ系米国人）のヒーロー、セサル・チャベスが農業者労働運動を起こしたぶどう農園があったところ？」と聞いたら、まさにそうで、また盛り上がり、「チャベスたちが結成した労働組合の代表者のひとりはフィリピン人だったんだよ。だから、今でもたくさんのフィリピン系の人たちが農園で働いている」とかいう話になって、私は感無量。なんだか知らないけど、落ち込んでいる最中に偶然にもそんな話しができて、とても救われた。
さて、パソコンを破壊してしまった後に書かせていただいた原稿（CDライナーと、スペイン語歌詞対訳）は、３月２０日に日本発売されたばかりの、エル・ハル・クロイの最新アルバム『192192192』で読めるので、ぜひCD買ってくださいー！！
しかし、奇しくも私のパソコン破壊事件は、この謎めいたエル・ハル・クロイのアルバムタイトルの意味にも通じるような出来事だったわけで、シンクロニシティを感じた。いやはや、われながら気合いが入った原稿が書けた。
なんと、５月には、来日公演も決定した！！
以下リンクよりちょっと試聴できるので、チェックしてみてください〜
エル・ハル・クロイ 『192192192』
