「チップ」を払うか、払わないか
ChilangoというメキシコシティのTokyo Walkerみたいな雑誌があるのだが、そこに掲載された以下の記事がよい。
Sanbornsというメキシコの大手チェーンのファミレス(ここ、世界一の資産家、カルロス・スリムが経営しているのだが……)のベテラン・ウェイトレスのセニョーラに、同店を永年利用している常連客のライターが行ったインタビュー。
メキシコの慣習、propina(チップ。メキシコでは、レストランなどで、飲食代の10〜15%のチップを払う)について語る項が興味深い。
セニョーラは、17年間も同店で働いているにも関わらず、給与は最低賃金だが、お客からもらうチップによって、生計をたてている。
「そのおかげで、娘を大学に行かせることもできたし、小さなアパートを買うこともできた。金持ちだからって、チップを皆払ってくれるわけじゃないよ。むしろ、収入がそれほどなさそうな人のほうが、きちんとチップをくれて、ありがとうの言葉も忘れない」。
私がメキシコに住みはじめたときは、飲食店で注文したものが来るのが遅かったり、食べ物に髪の毛が入ってたりしたら(メキシコでは、その確立が結構高い。たとえスノッブなレストランであってもだ)ムカついて、チップを払わない気でいたんだけど(「だって、義務じゃないでしょう?」とも思っていた)、メキシコ人である夫や友達たちには「でも、チップってのは払うものなんだ」といわれ続け、ようやく気がついた。
チップを払うか払わないかは、心意気にかかっているのだと。日本では、チップがなくても完璧なサービスをしてもらえるから、メキシコのチップ文化に違和感のある人も多いだろう。でもここはメキシコであり、日本の常識をこちらへ持ってくるのはナンセンス。
セニョーラがインタビューでいっていたように、懐に余裕がある人だからといってチップの払いがよいわけではないし、チップを払う人がお金持ちなわけではない。ようは心のゆとりの問題なのだ。
メキシコの飲食店でウェイターやウェイトレスとして雇用される、ほとんどの従業員は、最低賃金か、それに近い金額で働いている。それが、たとえ高級店であっても、だ。高級店ならば、チップはおのずと高額になるわけだが。