疎外感、マルコムX、ムスリムの教えが生んだ、心を射抜くブラザー・アリのラップ
準備中の小料理屋のほうは、ぼちぼちと進んでいて、今週から店内の什器や厨房機器の作成に入るようです。
詳しくは開店日誌を▼
しかし、ちょっと進行が遅れているうちに、また家賃を支払う時期になってしまった!
商売が始まってないのに、家賃を払うのは苦痛ですが、それまで毎日地道にやれることをやっていくしかねえべ。
最近執筆した記事を紹介します。▼メキシコみやげの人気ナンバーワン、サルサ(ソース)の記事です。
メキシコのワーストみやげの記事もありますので▼チェックしてみてください。
また、これは昨年執筆した記事ですが、最近メキシコ留学のお問い合わせが増えているので、どんな学校があるのかリストアップした記事のリンクを紹介。▼語学学校選びのご参考に!
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イヴェントのポスター▲
ボカフロハとQuilomboについては以下の記事をご参考に▼
なんと、今回は社会派のMC、Brother Ali (ブラザー・アリ)が出演!
▲2012年のアルバム『Morning in America and dreaming in color』のカヴァー
▼このニュースによれば、視力をほぼ失っていると書かれていますが、周囲は見えているようですよ!
私の夫はブラザー・アリの大ファンなので、いつもは出不精でほとんどのイヴェント不参加なのに、今回は珍しく、とてもはりきって出かけました。
▲ボカフロハとそのクルーはいつもどおり、良かったのですが、今日はブラザー・アリ目当て(写真がi-phoneですみません。イヴェントを心から楽しみたかったので今回はカメラ撮影無しでいきました)
いよいよイヴェントのトリを飾るアリの登場です。
▲観客の熱い反応から、メキシコでも人気があるのがわかる
英語のラップなので、私にはわからない部分がけっこうあったのですが、英語が得意でないメキシコのファンに向けて、比較的わかりやすい言葉を選んでいる気がしました。自治、アイデンティティを見つけること、コンプレックスからの解放などを訴え、Qulomboの指針と共通するものを感じました。
会場となった劇場は、音響がイマイチなのが残念なのですが、アリはそんな欠点を把握したうえで、マイクをうまく使いこなしていて、パフォーマンスの素晴らしさを実感。「今回のメキシコツアーは、ビジネスで来ているだけじゃないんだ。ボカフロハとQuilomboの真剣さに共鳴するものを感じたからやってきた」と壇上で話していたのも、泣けた。
突然、流暢なスペイン語で
「僕のスペイン語はゴミだから」と喋ったかと思えば、
「僕の妻はプエルトリコ人だからね。でも彼女はスペイン語喋らないけど」
と会場から笑いをとっていました。けっこうお茶目です。
一緒にいたDJも、アナログのターンテーブルを使っていて、スクラッチもすごくかっこ良かったし、久しぶりにヒップホップのライヴで感動してしまった。
▲イヴェント終了後は、ファンからの写真撮影やサインのお願いに快く応じていました。
彼は敬虔なイスラム教徒であることでも知られています。
▲この『The Islamic Monthly 』のアリのインタビュー記事が非常に興味深いので、ぜひ読んでほしいのですが、以下のようなことが書かれています。
ブラザー・アリは米国のミネソタ州ミネアポリスで育ち、8歳からラップを始めました。それには、彼がアルビノ(先天性白皮)であることから、周囲から馬鹿にされたり、疎外され、孤独を感じていた経験が元になっています。学校へ通うようになり、仲良くなったのがアフリカ系米国人の年上の子どもたちだったので、ヒップホップを知ります。彼が親交を深めた教師や仲間たちは、すべて黒人だったそうです。そこから、自分が感じていることをラップするのは自然な流れであったと。
また、彼は15歳からイスラム教徒なのですが、それには13歳のときに、地元の大学で行われた伝説的なMC、KRS-Oneの講演会に行った経験からです。KRS-Oneがイスラム教徒であったことから、講演会をきいて、「自分にとってイスラムの教えが、人生を乗り切る力を与え、自由になる力を得られる」と思ったのだと。
そのとき、KRS-OneがマルコムXの人生について語っていたのに興味を持ち、後にマルコムXの著書を読んで、「イスラム教は下級コンプレックスを持つ黒人たちの傷を治すことができる、唯一のシステムだ」と語っていた部分に非常に感銘を受けたそうです。アルビノの白人である自分にとっても必要だと信じて、ムスリム教徒となったのだとか。
米国でイスラム教を広めた先駆者であるImam Warith Deen Mohammedのコミュニティに参加するようになり、そこで、アイデンティティ、国籍、世代を越えた人々が共存できる理想的な世界を見たと。
彼のような政治的なメッセージや、真実を語り続ける強いアーティストが、資本主義社会のなかで活動していくのは困難で終わりのない闘いではあり、自身の理想と現実のギャップとも闘い続けることでもありますが、彼はこう語っています。
「芸術と文化とは、自身の表現であると同時に、人々に貢献するものでなければならない。アーティストたちは、私たちが何者であるか、どこから来たのかを思い出させ、知らせる存在である。この超資本主義社会のなかで、すべてが売られ、音楽も例外ではない状況のなかで、僕の闘いは、芸術と文化をコミュニティのなかで続け、僕が学び続けていることを生かせる人生を歩むことだ」
彼のいってることは、ごくシンプルで、当たり前なことなのですが、だからこそ、今の私の心にとても響きました。小難しい屁理屈を並べて、インテリ臭により煙に巻こうとする「アーティスト」より、100倍共感できます。
まっとうなことが淘汰されがちな世の中ですからね。その世の中をどうやってサバイヴするかを考えながら、眠りたいと思います。おやすみなさい、また明日。