気がつけば、ここはメキシコだった

メキシコ在住ライター、小さな食堂『EN ASIAN FOOD』のおばちゃん、All About メキシコガイド 長屋美保のブログ

インヘの終わらない物語

All Aboutのメキシコ情報が更新されています。
メキシコシティの雑貨屋、タトゥースタジオ、理髪店が融合したスペース、ラ・オンダ・ショールム&タトゥーの紹介を書きました。ナゴむ店です。ここでしか買えないメキシカン・オールディーズや、ロックなお土産が見つかりますよ!

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このラ・オンダは、フェスティバルも行っていて、以前bounceのweb版にそのレポート記事を書いたこともあります。

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ラ・オンダはソカロの目の前にあるので、観光がてら、ぜひ行ってみてください!
 
 
さて、小料理屋日誌が滞っておりましたが、銀行からの融資がようやく入金され、改装作業に入りました。
 
壁と床のタイルをすべて剥がしています。

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ここから、新たに壁を塗装し、床もきれいにしていきます。
 
実はこの作業開始までに、悶々とすることがありました。内装を引き受けるインヘと急に連絡が取れなくなったのです。
見積もりをいつまでたっても送ってこないし、これはど〜いうことなんだと思っていたので、改めてしつこく連絡すると、ようやく電話に出て「なんだ〜。もう他の業者に頼んでて、見積もりだけもらおうとしてるのかと思ってガッカリしてたんだよね」と、インヘの勝手な妄想でシカトされていたらしい。あれだけ、仕事頼むって何度も連絡してるのに、信じてもらえていなかったようです。
インヘは15の職業をもっているらしく、今回の内装全般、家具製作、看板作り、電気の配線、ガス、水道の配管、ガス台の作成など、すべて引き受けるといいます。それは、たいそう心強いのだが、それにしても見積もりをきっちり出さないくせに結構な値段を提示してきて、その半額をまず支払えといわれたので、こちとら一気に心配になりました。
こちらの不安そうな顔を見て、インへも気がついたのか「よし!俺のいってる見積もりに納得してないみたいだから、売ってる厨房器具を見に行こうぜ」と、業務用の厨房器具屋へ客のふりして行ってみました。
店内に並ぶ商品を確認すると、確かにベーシックな二口コンロだけでも、9000ペソ(72000円相当)以上する。ショーケース用の冷蔵庫に関しては、2万ペソ以上(約18万円)!高っ! 
「見ただろ、業務用の器材ってのは、たっけ〜んだよ。でも俺もっと、あの店に並んでいるのよりチンゴン(すっげぇ)なガス台作れるし、ショーケースも材料費だけくれたら、サービスで作ってやるよ」と、かなり自信満々なのです。いったい、インヘは何者なのだ?それが本当だとしたら、インヘが出した見積もりは妥当というか、かなりお得なのでは?という気がしてきました。
とりあえず、見積もり出さずにすぐに金払えという態度は気に入らないので、友人たちや建築を学んだ義理の妹にアドヴァイスをもらうために、電話をしまくりました。おおかた、金額は妥当だという意見をもらって、何とか落ち着いたのですが、勝手にいろいろ作業を進められると困るので、どんな配置にするかや、建材はどうするかを話したいので、家にきてほしいとお願いしました。
見積もりを持って登場したインヘに、私が書いた図面や、こんな素材を使ってほしいという写真をパソコンで見せながら説明。
 
 
建築専門用語などは、私もわからなかったりするので、細かく説明するために、こんな配置図まで紙で作って、あれこれとレイアウトを相談しました。↓

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インヘも納得してくれたようで、ご機嫌もよくなり、安心したのですが、そのあと、夫がインヘに、なぜ今の職業を選んだのかという質問をしたら、濃い話が出るわ出るわ。「俺は、ほぼストリートチルドレンだった」という話から始まり、ベラクルス州で、ものすごい大地主だったが、騙されてすべての財産を失い、路上で死んだ祖父の話、そこから家計を助けるために子どものときから縫製工場で働いていたが、工場の機械の仕組みを知るのが面白くて、機械をカスタマイズしたり、修理したりしているうちに、工場の代表に「おまえ、将来はエンジニアになれ!おれが学校へ行く金をだしてやる」といわれ、メキシコシティの国立工科高等学校(ポリテクニコ)へ通うようになり、卒業するまでの間に、いろんな職業をやりながら食いつないでいたとか。そして、タクシー運転手をやっていた頃に、得意客のおばあさんに気に入られて、メキシコシティのローマ地区(でも、彼が住んでいるのはローマ地区でも、オシャレなところではなく、まさにブニュエルの『忘れられた人々』のロケ地に近い場所だけど)のアパートの一室を破格で譲り受け、現在に至るというのです。結婚は今までに4回していて、子どもは6人いるらしく(私はそのうちの「ネズミ」と呼ばれる子どもを知っている)「妻とは別れたが、一緒に住んでいる。でも俺たちは友だちだね。共通の子どもの父と母という関係でしかない」とか、「昨年入院したときには、すべての過去の妻が面会にきたくらい、俺たちはうまくいっている」というドンファンぶりをアピールされました。2時間くらい話してたわ。
 
とにかく、小さな部品づくりからビル建築まで手がける不思議なおっさんです。先日会ったときには、カジノの椅子600脚作っていたし……。週末はアリシアで、チケット切りやってるし(多分ボランティアつーか、ビール代だけで働いている)。

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そして、懸案の代金ですが、3段階に渡って支払うことをなんとか納得してもらいました。
ここから3週間以内でできるそうです。今は順調に内装が進むのを待つばかりであります。
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