気がつけば、ここはメキシコだった

メキシコ在住ライター、小さな食堂『EN ASIAN FOOD』のおばちゃん、All About メキシコガイド 長屋美保のブログ

『忘れられた人々』のような光景が、そこにはあった

前回の記事『はじめの一歩 』で、思わぬ多くの反響があったので、ちょっと驚いています。身が引き締まる思いです!

さて、私たち夫婦が開店する小料理屋のために、ようやく契約にこぎつけた物件があるのは、自宅から徒歩圏内にある1930年に建てられた古い建物。しかも、外観からは想像できないほど、建物は大きいのですが、そのなかの小さなスペースを借りています。

建物全体は大家(40代後半の女性)の母親が購入したもの。建物の路面の3つある物件を子どもたちに分配したらしい。

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私たちの物件は、3つの物件の真んなかにある、最も小さなサイズ。

そこで、大家の母親がタコスを売っていたそうです。

予定しているのはキッチンがほぼ店の半分以上を占め、客席は10席がマックス。

でも、新しく商売を始める私たちにとっては、それくらいのサイズがちょうどいいのです。

 

先日、インヘニエロ(技師・略してインヘ)ラウルと、改装のために物件のサイズを計りに行きました。インヘは私のメキシコ第2の家である、ムルティフォロー・アリシアの内装工事をほぼ手がけているおじさん。アリシアの人たちとは旧知の仲。

 

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マスキングテープで、だいたいの什器などの位置を提案されました。

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すると、こちらが提案していた壁際にコンロを置く案ではなく、客席側にコンロを配置したいと考えているらしい。
スペースが小さいので、壁全面を収納用の棚にしたいのだと。
それで、コンロのある部分は、煙や油が飛ばないようにガラス張りにして、お客さんからフライパンを操ってる姿が眺められるようにしたいとのこと。
え〜っ!そんなのヤダっ!
インヘのなかでは、料理の鉄人みたいな「フライパンからファイヤー!」みたいなのをイメージしてるっぽいな。だが、私はマッチョな料理世界とは無縁なので、そんなの恥ずかしくてやりたくない。できれば、髪をひっつめて必死で料理を作っているところなんて誰にも見られたくないので、その案はお断りします。

 

f:id:mihonagaya:20150419095638j:plainふと気がつけば、大家の兄と、いとこ(二人とも熟年)の2人しか、この建物に住んでいないはずなのに、続々と人が鍵を使って家の中へ入ってくではないですか。

パーカッションを持ったドレッドの青年とか、路上で車の駐車管理やってるおじちゃん(もちろん不法)とか、コンサート会場の前で海賊版アーティストグッズ売ってるおじちゃんとか、タクシー運転手とか、話したことはないけれど、いつかどこかで見たことある顔ばかり。おいおい、みんな、ここに住んでるのかよ!
何やら宴会をやっているような声や音楽が聞こえてくるし。

水道や電気、ガスの位置を確認すると、ガスの配管がない(前に物件を借りてた人たちが外したらしい。ガスの銅管は売れるからな…)ので、設置し直さければならないという話になりました。

インヘが、建物の屋上に設置するガスタンクの場所を確かめに、一緒に行こうというのですが、そのためには、その宴会をやっている場所を通らなければならず、ちょっとヤだな~と思いながらも仕方なく登ったら、大家の兄であり、先日「俺のイトコは酔っぱらいだから、何か言ってきても無視してくれればいいし。俺に相談して!」といっていたその本人が酩酊していて、「いや~すまんすまん、昼間っから宴会やっちゃって。ほんとう~にスマミセン!」って、おまえが一番酔っぱらいじゃねえか状態。しかも、謎の中学生のようなジャージ姿の少年がいます。大家兄は、「あ、こいつ、俺の息子!ここに住んでるの」というのですが、先日の話だと大家兄は、独身ということだったのだが…… (まあ、人にはそれぞれ、いろんな事情がありますからね)。

そして半裸だった大家のいとこは、私たちに気がつき、ワイシャツを着て挨拶してくれたので、少し立ち話をしました。なんでも彼はベトナム戦争時にアジアへ行ったついでに、日本へ行ったこともあるそうです(なんでなのかは知りません)。

なんだか、建物の古さとあいまって、その宴会の姿が、ルイス・ブニュエルの『忘れられた人々』から抜け出てきたようでありました。でも悪いバイブレーションみたいなものはなかったので、この人たちとは、うまくやれば大丈夫だろうと感じます。

しかし、そんなことよりも銀行から降りるはずの金が、未だに振り込まれていないのが、すっごい気になる気になる気になる……

そんな状況なのに、「大丈夫だから、心配するな、心配されるとこっちも心配になる。リラ~ックス~」となぜか異様に楽観的な夫。
(つーか、こんな重要なことを心配しないほうがおかしい気もするんだけど……)

さて私たち、いったいどうなるんでしょうか。はたして店が開けるのか!!

(次号につづく)

……と、頭のなかは店のことばかりなのですが、いろいろ苦労しながらも、書き上げた記事の数々が世に出はじめたので、お知らせです。

まず、富山の世界のルーツ音楽フェスティバル、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドから生まれた日本、韓国、メキシコのメンバーによる強力ユニット、クアトロ・ミニマルのメキシコ・ツアーレポート第2弾がアルテスweb版に公開されました。

クアトロ・ミニマル メキシコ・ツアー・レポート | アルテス電子版

第3弾も今月中に公開予定。なんと、クアトロ・ミニマルが今年8月開催のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドにも出演が決定したとのこと!めでたい!!

sukiyakifes.jp

また、2015年4月20日発売のラティーナ最新号2015年5月号に、このブログ記事でも紹介した、メキシコの新鋭フェスティバルNRMALのレポートとコロンビアのモンド集団メリディアン・ブラザーズのインタビューを書かせていただきました。

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latina.co.jp

メリディアン・ブラザーズのリーダー、エブリスに対面取材できたのですが、インテリで気さくで、いろいろ面白いことを喋ってくれましたよ!

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NRMALでのメリディアン・ブラザーズの演奏が凄すぎて(だって、メンバー全員複数の楽器を交替で演奏していて、女性メンバーのマリアにいたっては、踊りもキレがあり、ドラムスティックを宙に放ってキャッチするみたいな芸当もできるんですから)衝撃でした。ぜひ日本でのライヴを実現してほしいものです!また同号の海外ニュースには、ブログ記事『気がつけば、ジェームス・ボンドはすぐそこに 』でもお知らせしたメキシコシティで行われた「ZZK イヴェント」のミニレポートも書いています。

開店したら、こういった取材へ出かけることも少なくなりそうと思って、先月はバリバリ動きました。

そして同誌には、グッとくるスペイン・ラテンアメリカ映画を日本で配給しているAction inc.(比嘉セツさん代表)の10周年を祝し、4月25日より新宿 のK's シネマにて開催の特集上映『ラテン!ラテン!ラテン!』の紹介記事も掲載されています。

アクションの配給作品に関しては、思い入れがすご~~~くあり、いろいろ語りたい!!というわけで、これ以上書くと長くなるので別記事に書きます!

http://mihonagaya.com/