「クリーンエネルギー」への疑問。オアハカの風力発電問題を扱ったドキュメンタリー
先日の「オアハカが我が家へやってきた〜!」の記事で書いたように、姑からもらったオアハカ食材を未だに食べ続けているのですが、オアハカといえば、2週間ほど前に、ムルチフォロー(マルチ文化フォーラム)・アリシアでとても興味深いテーマの映画を観ました。
フランス出身の Alèssi Dell'Umbria監督による「Istmeño, Vientos de reberdía」というドキュメンタリー映画で、オアハカのイツモ地方テワンテペックにある風力発電が地域に与える問題を扱っています。風力発電は環境にも害がないという良いイメージを持っていた私にとって驚くべき内容で、自分の無知さを思い知りました。
会場には、現地オアハカの組合の中心で活動している方も来てました。
政府が安売りした海と湖の境にある土地をスペインの会社が買収し、無数の風力発電用の風車が建つ地区。そこで生まれた電力は、地元のために使われるのではなく、Walmart(米国系スーパー)、BIMBO(メキシコの大手パンメーカーで中国やラテンアメリカに進出)、FAMSA(コカ・コーラを販売するメキシコの会社)、OXXO(メキシコのコンビニ最大手)、Heinekenなどの多国籍企業の電力となって売られている。そのための風力発電が、地元の農業や漁業、畜産業にまで影響を与えているのです。
この発電所の開発には米国や日本を含めた外資企業や商社が関わっているとか。
そしてこの「クリーンエネルギー」を銘打った発電所によってさまざまな利権が絡んでいる。なんだか、日本の原発を思いださせるような話です。
風車を動かすモーターの音や振動によって、魚たちが近海へ寄り付かなくなり、モーターを動かすための潤滑油が海へ流れ、魚が死ぬ。ペリカン、カモメなど、希少な渡り鳥が風車の羽に巻き込まれて死ぬ。モーター部分の熱で温められた土により、椰子の葉は枯れ、乳牛も食べる草が育たないので痩せ細り、乳もあまり出なくなっている。この地域の生態系は破壊されつつあり、古くから漁業を営んで来た人々の暮らしが脅かされているというのです。テワンテペックの人々は先住民サポテコにルーツを持ち、はるか昔から漁師をやってきました。村の男性は映画のなかで、「約500年前にスペイン人たちがこの大地を侵略した。そして現在も再びスペイン人たちによって、私たちの大地が奪われようとしている」と語っています。警察数百人の圧制を、石やこん棒、火炎瓶を投げて追い払ったり、村の女性たちのあまりにもあっけらかんとして強い姿に、希望をもったりもするのですが、実際の問題はかなり深刻ということがわかる映画でした。
では、いったいどんな発電が一番いいのか……と考えたら、やはり太陽光なのだろうか。
メキシコではこの映画の巡回上映が始まっていて、このイヴェントページから上映情報を確認できるようです↓↓
https://www.facebook.com/events/1789401477950895
監督の意向により、映画はどこかに配給権を売るのではなく、無料で上映していきたいとのこと。ぜひ、日本でも上映できるといいのですが。
同じようにオアハカの風力発電の問題を扱った短編ドキュメンタリー『Somos Viento』をyoutubeで観ることができます。
英語字幕版はこちら
この映画のエンディングにアンパロ・サンチェス(元アンパラノイア)の歌『Fuera fiera』が入っています。
それで、気がついたのですが、この映画のタイトルはアンパラノイアの曲からとったのでしょう。
ちなみに、アンパラノイアの『SOMOS VIENTO』PVにはメキシコシティのメルセー市場がロケ地に選ばれていて、ちょっと嬉しい。